背後から視線を感じる。
後ろにいるのはセノだ。恐らくセノがティナリの背を、じっと穴が空くほど見ているのだろう。
「じゃあ頼んだよ」
「はい、ありがとうございます!」
礼儀正しく頭を下げて、去っていくレンジャーの後ろ姿を見送る。
「――それで……」
くるりと振り返って室内に視線を戻すと、明らかに機嫌が悪そうな顔をしたセノがこちらを見ていた。
「……なんだよその顔」
本題に入る前に、その表情について突っ込んでしまう。仏頂面、という言葉がこれほど似合うのも珍しいだろう。ティナリからするとセノの表情は決してこの仏頂面ばかりではないが、ほかの者に言わせればだいたいこう見えているらしい。なるほど、確かにいつもこんな顔をされていれば怖いだろう。
「ティナリ、俺に対して扱いがなんだか雑じゃないか?」
唇を尖らせながら、セノはボソリと呟く。ティナリの耳はそれを拾って、そりゃあ、と言い返した。
「だって、セノだからね」
どうも、先ほどのレンジャーや、ほかの共通の友人――つまりはカーヴェやアルハイゼンらを指すわけだが――らと比べ、自分の扱いが雑だと言いたいらしい。
ほかの誰より付き合いが長く、近くにいるのがセノだ。セノの言葉を借りるのならば、そうやって少し雑に扱うのがティナリとセノのちょうどいい距離なのだ。
「なに? 拗ねてるの?」
「拗ねてない」
「拗ねてるだろ」
「拗ねてない」
ぷいとそっぽを向いてしまったセノの後頭部を見つめる。いつもの黒いローブのフードは脱がれ、ふわふわと揺れる白い髪が流れ落ちている。僅かに見える小さな耳が可愛らしい。
「セノだから少し雑にしてるけど、セノだから大切にしたいし、こらからも一緒にいたいし、幸せにしたいって、僕は思ってるよ?」
その丸い頭に告げると、セノはくるりと振り返った。
「ティナリを幸せにするのは俺だ」